実際に災害が発生したとき、本当に防災用の電源としてポータブル電源が必要なのでしょうか?多くの人が心の中でこのような疑問を抱き、ネットで検索しても「ポータブル電源を買うべき」と勧める広告記事ばかりで、結局答えが見つからないという人も少なくありません。
実は、ポータブル電源はすべての人に必要なものではありません。
知恵袋には、宮城県在住で3.11東日本大震災を経験した方による、こんなリアルな回答があります。災害時におけるポータブル電源の優先度は、実はそれほど高くないというものです。スマホを充電できても、基地局自体が停電してしまえば、結局使うことはできません。
本当に大きな災害が発生した場合、自宅に留まることができず、屋外へ避難しなければならない可能性もあります。そのような状況では、重いポータブル電源を持ち運ぶことができなかったり、持ち出す時間がなかったりすることもあります。そうなると、せっかく用意したポータブル電源が役に立たない可能性もあります。
この記事では、ポータブル電源が本当に必要なのかを詳しく分析します。どのような状況でポータブル電源が必要になるのか、逆にどのような場合にはポータブル電源を使う場面がないのか、そして購入後に「買わなければよかった」と後悔した場合はどうすればいいのかについて解説します。

なぜ「防災用ポータブル電源は役に立たない」と言われるのか?
普段から掲示板や知恵袋をよく見る人なら、「ポータブル電源を買う価値はない」「防災用ポータブル電源なんて必要ない」という話題を目にすることがあるかもしれません。
しかし、これらの意見は決して根拠のないものではありません。なぜなら、防災目的でポータブル電源を購入すると、実際に以下のような問題に直面する可能性があるからです。
| 問題点 | 内容 |
| ポータブル電源は重すぎる | 大容量モデルの中には20kgを超えるものもあります。災害発生時に緊急避難が必要になった場合、持ち出すことができず、逆に避難の妨げになってしまう可能性があります。 |
| 避難時の充電にはポータブル電源を使わない | 避難のために家を離れたり、屋外の避難場所で過ごしたりする場合、必要なのは防災バッグ、スマホ用のモバイルバッテリー、そして何よりも食料や水、調理用のカセットコンロなどです。 |
| 普段使わず、放置してホコリをかぶる | 多くの人が共通して抱える不安は、「防災のためにポータブル電源を買ったものの、普段は使う機会がなく、物置に置いたままになってしまう」ということです。長期間使用しないと、いざ取り出した時にバッテリーが充電できなくなっている可能性もあります。 |
| 価格が高く、コスパが悪い | ポータブル電源の購入には数万円から十数万円程度の費用がかかることがあります。数年間一度も使わなければ、「無駄な出費だったのでは」と感じてしまい、費用対効果が悪いと感じる人もいます。 |
上記だけを見ると、確かにポータブル電源が向いていない状況もあります。
しかし、本当にポータブル電源にはまったく価値がないのでしょうか?
答えは「そうではありません」。大切なのは、自分の生活環境や実際の使用シーンに合わせて判断することです。
次は、ポータブル電源にはどのようなメリットや役割があるのかを見ていきましょう。
ポータブル電源はどのような防災シーンで役立つのか?
防災用ポータブル電源には、具体的にどのような役割があるのでしょうか?
実は、自宅避難をする必要がある人や、家庭内に特別な事情を抱えている人にとって、ポータブル電源は非常に重要な備えになります。
1.在宅避難の場合:
住宅の構造に問題がなく、自宅に留まる「在宅避難」を選択する場合、ポータブル電源は必要不可欠なアイテムになります。停電時でも、最低限の生活を維持することができます。
スマホやルーターの充電に使用し、災害情報を受け取ったり、家族や外部との連絡手段を確保したりできます。
LEDライト、扇風機、電気毛布などに給電し、夜間の暗闇や極端な気温への対策ができます。
CPAP(持続陽圧呼吸療法)装置などの医療機器への給電や、短時間の冷蔵庫稼働によって、食品や薬の劣化を防ぐこともできます。
2.車中避難の場合:
もし、地方や山間部などで住宅が被害を受け、近くに適切な避難場所がない場合、またはペットがいるため避難所での生活が難しい場合、車を一時的な住居として利用する「車中避難」を選択することがあります。そのような状況では、ポータブル電源が大きな助けになります。車内での生活環境を改善し、照明器具、スマホ、電気毛布などに電力を供給することができます。

3.家庭に子どもや高齢者がいる場合:
家庭に乳幼児がいる場合、母乳を温めたり、粉ミルクを作ったりするために電力が必要になります。
また、高齢者の場合は、健康管理機器や医療機器(CPAP呼吸器、酸素濃縮器など)、暖房・冷房機器を使用するケースもあります。
これらはすべて電気を必要とするため、災害によって長時間停電が発生すると、リスクが大きくなります。このような家庭では、ポータブル電源は家族の安全を守るための重要な備えになります。
4.悪天候が多い地域の家庭:
暴風雪や猛暑などの異常気象が発生すると、電力インフラが大きな被害を受ける可能性があります。
このような停電は数時間で復旧するとは限らず、数日間にわたって電気が使えないケースもあります。その際、ポータブル電源があれば、家庭の暖房、照明、通信機器などへの電力供給に役立ちます。
自分にポータブル電源が必要かどうか判断する方法
自分にポータブル電源が必要かどうかを判断する際、ネット上のインフルエンサーのおすすめや広告だけを見るのではなく、自分が住んでいる地域で最も起こりやすい災害は何なのか、避難所などへ移動する必要があるのか、それとも自宅で避難生活を送るのか、また特殊な機器を動かすために継続的な電力供給が必要なのかを考えることが大切です。
以下の一覧表を参考に、自分にポータブル電源が必要かどうかを判断してみましょう。
ポータブル電源が必要かどうかを判断する一覧表:
| ✅ ポータブル電源が必要なケース | ❌ ポータブル電源が不要なケース |
| 災害の被害が比較的小さく、住宅の構造に問題がなく、自宅避難できる可能性が高い場合 | 被害が大きい災害で、避難所への移動や高台への避難が必要な場合 |
| 居住地域が洪水・土砂災害・津波などの警戒区域に指定されていない場合 | 周辺で津波、洪水、土砂災害、地震による二次火災などのリスクが高い場合 |
| 災害による停電が数日間続く可能性があり、家庭で電力を維持する必要がある場合 | 災害発生後すぐに自宅から緊急避難しなければならない場合 |
| 災害発生時に時間的な余裕があり、ポータブル電源を持ち運べる状況の場合 | 災害時に最低限の荷物だけを持って避難する必要があり、貴重品や防災バッグしか持ち出せない場合 |
日本では、各自治体が防災マップ(ハザードマップ)を公開しており、洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域、地すべり危険区域などの情報を確認できます。
まずは自分の住んでいる住所が、これらの警戒区域に含まれているかを確認してみましょう。
もし自宅が警戒区域内にある場合、災害時には「避難して安全な場所へ移動する」可能性が高く、ポータブル電源は防災費用の中で最優先の投資とは限りません。一方で、自宅が警戒区域に指定されておらず、住宅自体も比較的新しく安全性が高い場合は、「在宅避難」を選択する可能性が高くなります。その場合は、ポータブル電源の導入を検討する価値があります。
ポータブル電源がない場合、災害時にはどのような代替手段がある?
災害が発生した際、自宅避難が必要になったものの、ポータブル電源を準備していなかった場合でも、まず慌てる必要はありません。
緊急時に活用できるいくつかの代替手段があります。以下のリストを参考にして、自宅にこれらの備えがあるか確認してみましょう。
- 大容量モバイルバッテリー:
ほとんどの家庭にあるモバイルバッテリーは、避難所へ移動する場合でも在宅避難をする場合でも、スマホなどの小型機器への充電に役立ちます。
もし自宅にない場合は、購入時にPD急速充電対応で、容量20,000mAh以上のモデルを選ぶのがおすすめです。充電速度を確保しながら、十分な容量を備えることができます。 - 車載シガーソケット+インバーター:
車を所有している場合、車載シガーソケットにインバーターを接続することで、小型家電やノートパソコンなどに電力を供給できます。
また、車載シガーソケットはポータブル電源への充電にも利用できます。詳しい内容については、こちらの記事【ポータブル電源の走行充電ができない原因とは?車のシガーソケット充電で失敗しない方法と注意点】で詳しく解説しています。
- 電気自動車のV2L機能:
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)を所有している場合、V2L機能を利用することで、小型家電などへ給電することも可能です。 - 手回し発電ラジオ:
停電時や、基地局が被害を受けてスマホが圏外になった場合でも、災害情報を入手するために役立ちます。
ただし、手回し発電の効率はあまり高くなく、主な用途はFM・AMラジオの維持です。スマホへの充電手段として使うことは現実的ではありません。
- 懐中電灯:
懐中電灯は非常に一般的な小型照明器具です。特に地方や山間部などで災害が発生した場合、満充電の懐中電灯があれば、一時的な照明として活用でき、停電時の緊急対応に非常に役立ちます。家庭に常備しておくことをおすすめします。 - カセットコンロ:
カセットコンロがあれば、簡単な湯沸かしや調理ができます。災害による停電でポータブル電源が使えない場合でも、お湯を沸かしたり、食事を温めたりすることができます。
特に乳幼児や高齢者がいる家庭では、ミルクを温めたり、食事を温めたりすることは非常に重要です。
ただし、使用するにはガスボンベを備蓄しておく必要があります。また、燃焼時には一酸化炭素が発生する可能性があるため、室内や車内では使用しないよう注意が必要です。
ポータブル電源を購入後に後悔しないためのポイント
ポータブル電源を購入した後に「買わなければよかった」と後悔してしまう大きな理由は、購入前にポータブル電源で重視すべきポイントや正しい使い方、メンテナンス方法を十分に理解していないことが多いです。
よく分からないまま勢いで購入してしまうと、実際に使う段階で「思ったより使えない」「充電できない」「必要な機器に使えない」といった問題に直面し、結果的に「ポータブル電源は自分には必要なかった」と感じてしまいます。
では、ポータブル電源を購入してから後悔しないためには、購入前に以下のポイントを理解しておく必要があります。
容量が十分か確認する
これは、購入後に最も後悔しやすいポイントです。
知恵袋では、「防災用として1000Whのポータブル電源を購入したが、容量が足りず、電力復旧前にバッテリーを使い切ってしまった」という後悔の声もあります。
実際には、購入前に「在宅避難で長期間停電した場合、どの家電を優先的に使いたいのか」をあらかじめ考え、そのために必要な容量を計算してから購入することが大切です。
せっかくお金を払って購入しても、必要な場面で役に立たなければ後悔につながってしまいます。
以下は、在宅避難時によく使用される機器の目安です。自分の家庭で必要な容量を計算する際の参考にしてください。
| 使用したい機器 | 参考消費電力 | 使用時間 | 1日の消費電力量 |
| スマートフォン | 10〜15W | 2時間 | 20〜30Wh |
| WiFiルーター | 10〜15W | 24時間 | 240〜360Wh |
| 扇風機 | 20〜40W | 8時間 | 160〜320Wh |
| LEDライト | 5〜10W | 6時間 | 30〜60Wh |
| 電気毛布 | 15〜30W | 8時間 | 120〜240Wh |
| ポータブル冷蔵庫 | 40〜60W | 24時間 | 480〜720Wh |
| CPAP呼吸器 | 30〜60W | 8時間 | 240〜480Wh |
これらの数値を合計すると、1日に必要なおおよその電力量が分かります。
その後、「何日間停電に耐えたいか」を考えて必要日数分を掛け、さらに約20%程度の変換ロスや余裕分を加えることで、自分に必要なポータブル電源の容量を大まかに計算できます。
ここでは、避難時におけるポータブル電源の正しい使い方について、もう少し詳しく説明します。
まず、災害(台風や地震)が発生した後は、最初に自宅の電気配線に漏電が発生していないか、また電線が損傷していないかを確認してください。地震や台風によって、家の中の物が倒れたり落下したりして、電線や電気機器が破損している可能性があります。そのため、配線に漏電の危険がないか、電線が損傷していないかを必ず確認してから、ポータブル電源で電化製品へ給電するようにしましょう。
また、ポータブル電源に蓄えられる電力には限りがあり、使い切れば再び充電するまで使用できません。そのため、限られた電力は本当に必要な機器から優先的に使うことが大切です。
最優先:スマートフォンの充電
次に優先:LED照明、CPAP(睡眠時無呼吸症候群治療用の呼吸補助装置)などの医療機器、冷蔵庫
最後に検討:扇風機、電気毛布、テレビなどの快適性を高める機器
Piforz製品の容量を例にすると:
PF500(518Wh):
停電時に1日程度、スマホを充電でき、LEDライトを点灯し、WiFiも維持できれば十分という場合、PF500の容量で対応できます。
スマホ充電+LED照明+WiFiルーターという基本的な生活維持に必要な機器を、約1日程度動かせる容量です。
防災用品をすでにある程度準備していて、最低限の電力だけ確保したい家庭や、予算を抑えたい家庭に適しています。
PF1500(1210Wh):
この容量になると、夏場は扇風機、冬場は電気毛布を追加で使用でき、停電中でも少し快適に過ごすことができます。
スマホ+照明+WiFi+扇風機または電気毛布という組み合わせで、約1日程度の使用が可能です。
さらにソーラーパネルと組み合わせれば、使用時間を延ばすこともできます。
PF2000(2073Wh):
この容量帯になると、より安心感のある防災電源になります。
スマホ+WiFi+LED照明+扇風機または電気毛布+ポータブル冷蔵庫という組み合わせを、約3〜4日間維持できます。
ソーラーパネルと組み合わせれば、さらに1週間以上まで使用時間を延ばすことも可能です。
もし自宅で避難生活を続ける「在宅避難」の可能性が高い場合、この容量クラスのポータブル電源は有力な選択肢になります。
ソーラー充電対応モデルを選ぶ
前述したように、災害時に容量が不足した場合、その後も電力を確保する方法を考える必要があります。
そのため、ポータブル電源を選ぶ際はソーラー充電に対応しているモデルがおすすめです。
バッテリー残量を使い切ってしまっても、太陽光を利用して再び充電できるため、長期間の停電時でも電力を維持できる可能性が高まります。
定格出力が災害時に使用したい家電に対応しているか確認する
在宅避難では、ポータブル電源を使用できる場面は多くあります。
しかし、電気毛布やIHクッキングヒーターなど、ヒーターやモーターを搭載した家電は、起動時に一時的に大きな電力を必要とします。
そのため、定格消費電力だけを見て選ぶと、使用開始時に電力不足で停止してしまう可能性があります。
購入前には、使用したい家電の消費電力を確認し、ポータブル電源の定格出力と最大出力の両方に十分な余裕があるモデルを選びましょう。
「ギリギリ使える容量」ではなく、余裕を持ったスペックを選ぶことが重要です。
ポータブル電源のバッテリー種類を確認する
バッテリーの種類は、購入したポータブル電源を災害時に安心して使用できるかを左右する重要なポイントです。
ポータブル電源のバッテリーには、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を採用したモデルがおすすめです。
Journal of Power Sources(Elsevier)に掲載されたリチウム電池の自己放電率に関する研究によると、リン酸鉄リチウム電池の月間自己放電率はわずか0.5〜1.5%程度で、半年保管した場合でも容量保持率は90%以上とされています。
長期間家庭内で防災用として保管する場合、自己放電が大きいバッテリーでは、いざ使おうとした時に長期間の放置によって過放電状態となり、充電できなくなる可能性があります。
一方、リン酸鉄リチウム電池は安定性が高く、例えばPiforzのポータブル電源の場合でも、3〜6か月に一度程度、充電メンテナンスを行うだけで長期間安心して使用できます。
UPS(無停電電源装置)機能に対応しているか確認する
家庭のパソコンや医療機器などの精密機器は、停電した瞬間でも影響を受けないよう、電源切替時間の短さが重要です。
一般的に、UPS機能を利用する場合は20ms以内の切替時間が求められます。
そのため、ポータブル電源を選ぶ際は、UPS/EPS機能に対応し、20ms以内で切り替え可能なモデルを選ぶと安心です。
購入後は放置せず、普段から使う
多くの人はポータブル電源を購入した後、収納スペースに置いたまま数か月、場合によっては数年間放置してしまいます。
そして、いざ必要になった時に取り出してみると、長期間放置によってバッテリーが消耗し、充電できなくなっていて「買わなければよかった」と後悔するケースがあります。
おすすめの使い方は、普段の生活でも積極的に活用することです。
キャンプや車中泊では移動用電源として使用できます。
また、自宅では昼間に充電し、夜間に家電へ給電することで、電力使用時間をずらして電気代の節約にも活用できます。
その他、一時的な電源が必要な場面でも積極的に使うことで、無駄を減らせるだけでなく、実際に災害が発生した時にも操作に慣れた状態で使用できます。

適切に保管し、定期的にメンテナンスする
長期間使用しない場合でも、ポータブル電源の残量はできるだけ68%〜80%程度に保つことをおすすめします。また、3〜6か月に1回程度は電池残量を確認し、実際に取り出して使用してみたうえで、正しい方法でポータブル電源を充電しましょう(【ポータブル電源の充電方法6選|充電時間・注意点・災害時の対策】では、ポータブル電源の充電方法や注意点、災害時の対応について詳しく解説しています)。
いざ災害が発生したときに、取り出してみたら電池残量がなくなっていたり、保護機能が作動して充電できなかったりする事態を防ぐためにも、日頃から定期的に状態を確認しておくことが大切です。

